内容説明
諷刺とユーモア満載、サキの人間動物園
名作「開けっぱなしの窓」「お話上手」他、軽妙な話術とウィットが冴えわたるサキの名短篇集を初の全訳。挿絵エドワード・ゴーリー。
《本書に登場するけだものと超けだものたち》
森林狼……おとなしい性格。さる上流夫人が魔法で変身した姿(らしい)。
カワウソ……手に負えない悪戯者。さる令嬢の生まれ変わり(かも)。
大豚……凶悪な面構えでお澄まし母娘を震え上がらせる。
七羽めの雌鶏……襲ってきた蛇を逆につつき殺し、車中の話題を独占。
雄牛……アデーラ嬢の家に上りこみ、当分動くつもりはない模様。
クローヴィス……舌先三寸で世間を渡る。悪ふざけが大好き。
十月の午後というのに窓を開け放しているのはなぜか。少女の話では、三年前に叔母を襲ったある悲劇が関係しているというのだが……名作「開けっぱなしの窓」。列車内で騒ぐ子供たちに相客の男がした“やんなるくらい良い子”のお話とは……「お話上手」他、生彩ある会話と巧みなツイスト、軽妙な笑いの陰に毒を秘めた短篇の名手サキの傑作、全36篇。挿絵エドワード・ゴーリー。
[目次]
女人狼
ローラ
大豚と私
荒ぶる愛馬
雌鶏
開けっぱなしの窓
沈没船の秘宝
蜘蛛の巣
休養にどうぞ
冷徹無比の手
出たとこ勝負
シャルツ-メッテルクルーメ方式
七羽めの雌鶏
盲点
黄昏
迫真の演出
テリーザちゃん
ヤルカンド方式
ビザンチン風オムレツ
復讐(ネメシス)記念日
夢みる人
マルメロの木
禁断の鳥
賭け
クローヴィスの教育論
休日の仕事
雄牛の家
お話上手
鉄壁の煙幕
ヘラジカ
「はい、ペンを置いて」
守護聖人日
納戸部屋
毛皮
慈善志願者と満足した猫
お買い上げは自己責任で
訳者あとがき
[原題]Beasts and Super-Beasts
[著者略歴]
サキ Saki
本名ヘクター・ヒュー・マンロー。1870年、英領ビルマ(現ミャンマー)で生まれる。父親はインド帝国警察の監察官。幼くして母を亡くし、英国デヴォン州で祖母と二人のおばに育てられる。父親と同じインド警察勤務の後、文筆家を志し、1902年から1908年まで新聞の特派記者としてバルカン半島、ワルシャワ、ロシア、パリなど欧州各地に赴任。その後ロンドンに戻り、辛辣な諷刺とウィットに富んだ短篇小説を「サキ」の筆名で新聞に発表。『ロシアのレジナルド』(1910)、『クローヴィス物語』(11)、『けだものと超けだもの』(14)などの作品集で短篇の名手として評価を集める。第一次世界大戦が勃発すると志願兵として出征、1916年、フランスの西部戦線で戦死した。没後まとめられた短篇集に『平和の玩具』(19)、『四角い卵』(24)がある。
[訳者略歴]
和爾 桃子(わに ももこ)
英米文学翻訳家。訳書にサキ『クローヴィス物語』(白水社)、ロバート・ファン・ヒューリック〈狄(ディー)判事シリーズ〉(早川書房)、ジョン・ディクスン・カー『夜歩く』『髑髏城』『蠟人形館の殺人』(創元推理文庫)、ジェイソン・グッドウィン『イスタンブールの群狼』、ポール・ドハティ『教会の悪魔』(以上早川書房)ジョン・コリア『ナツメグの味』(共訳、河出書房新社)などがある。
*略歴は刊行時のものです