内容説明
没後50年記念出版! 巨匠ウォーの神髄
辛辣な笑いが冴える15篇を独自に厳選
ウォー氏の書くものに笑わずにいるのは不可能である。
また同様に…悲劇的だと感じないのも不可能である。
――セシル・モーリス・バウラ
黒い笑い、皮肉、風刺、狂気、不倫など、巨匠の神髄が光る15篇を独自に厳選。
初訳4篇ほかすべて新訳。自筆の挿絵6点掲載。
「良家の人々」
ひどく不名誉な状況でオックスフォード大学を退学になったヴォーンに、ある仕事が舞い込む。それは、さる公爵の孫息子の大陸遊学に、チューターとして1年ほど同行するというものだった。どうせぶらぶらしているし、悪い話ではない。そう思い引き受けたヴォーンだったが……。
「勝った者がみな貰う」
貴族のケント=カンバランド家の当主が第一次世界大戦で戦死、未亡人が家を取り仕切っている。長男はオックスフォード大学に進学させるが、節約のため、次男は無名のパブリックスクールに進学させる。やがて次男はオーストラリアに追いやられ、そこで大富豪の牧場主の娘と恋仲になる。未亡人は長男とその娘を結婚させようと画策するが……。
20世紀のイギリス文学を代表する小説家の一人であるウォーは、短篇も数多く書いている。そこに描かれた人間の悲哀や滑稽さは、自らの苦い経験から生まれている。本書には、巨匠ウォーの辛辣な諷刺とユーモア、ブラックな笑いが冴えわたる作品を15篇厳選して収めた。初訳4篇ほかすべて新訳、自筆の挿絵6点掲載。
[目次]
良家の人々
〈ザ・クレムリン〉の支配人 *初訳
不況期(スランプ)の恋
お人好し *初訳
現実への短い旅
アザニア島事件 *初訳
ベラ・フリース、パーティーを開く
ディケンズ好きの男
昔の話
見張り
ラヴデイ氏のちょっとした遠出
勝った者がみな貰う
イギリス人の家
気の合う同乗者 *初訳
戦術演習
訳者あとがき
[著者略歴]
イーヴリン・ウォー
Evelyn Waugh(1903-1966)
ロンドン郊外のハムステッドに生まれる。オックスフォード大学では放蕩生活を送りながら学内文芸誌に関わる。大学中退後、画家を志すも断念。パブリック・スクール進学予備校の教師となる。22歳の時、自殺未遂。1928年、教師時代の体験を基にした『衰亡記』を発表。『卑しい肉体』(1930)では第一次大戦後の「陽気な若者たち」を取り上げ注目される。同年、カトリックに改宗。『黒いいたずら』(32)、『一握の塵』(34)、『スクープ』(38)など、辛辣な諷刺とユーモアに溢れた作品で人気を博す。作風を一変、貴族の生活を描いた『ブライズヘッド再訪』(45)はアメリカでベストセラーになる。戦後の代表作に第二次大戦を描いた『戦士』『士官と紳士』『無条件降伏』の『名誉の剣』三部作(52-56。合本改訂版、65)がある。
[訳者略歴]
高儀 進(たかぎ・すすむ)
1935年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。翻訳家。日本文藝家協会会員。
訳書に、ロッジ『大英博物館が倒れる』『どこまで行けるか』『小さな世界』『楽園ニュース』『恋愛療法』『胸にこたえる真実』『考える…』『作者を出せ!』『ベイツ教授の受難』『改訳 交換教授』『絶倫の人 小説H・G・ウェルズ』、トマリン『チャールズ・ディケンズ伝』、ウォー『スクープ』(以上、白水社)ほか多数ある。
*略歴は刊行時のものです