内容説明
冷戦の「負の遺産」を清算できるのか?
ピュリツァー賞受賞、傑作ノンフィクション!
ソ連崩壊後、兵器実験施設の隠蔽工作、頭脳および原材料・機材の流出を阻止すべく、
ある「秘密作戦」が進行していた・・・。
米国の調査団は「冷戦の置き土産」にどう対処したのか、
「ナン=ルーガー法」が果たした大きな功績とは?
核・生物兵器の軍拡競争の実態、政治家や科学者の奮闘、CIAやKGBの暗躍を、
米「ワシントン・ポスト」紙の記者が、最新公開資料を駆使して精細に描く。
[地図・口絵写真収録]
「一行はウランが保管されている建物に向かった。ドアにはすべて、ウェーバーがのちに南北戦争時代の南京錠と形容した古風なカギがかかっていた。大きく開け放って中に入ると、壁はコンクリート製、床は土で、高いところに窓があった。端から端まで、膝ほどの高さのレンガ製の台座が並んでいた。台座の上にはベニヤ板が何枚も敷かれ、その上に高濃縮ウランを収めた鋼鉄製のバケットやキャニスターが並べられ、連鎖反応を避けるため、それぞれ一〇フィート(約三メートル)ほど距離があけられていた。どの容器にも小さな金属製の名札が付いていて、中身とその分量がわかった。」
第21章「サファイア計画」より
[目次]
第2部
第11章 レイキャヴィクへの道
第12章 武器よさらば
第13章 細菌、毒ガス、そして秘密
第14章 失われた年
第15章 最大の突破
第16章 不穏な年
第3部
第17章 大変動
第18章 科学者たち
第19章 発覚
第20章 エリツィンの約束
第21章 「サファイア計画」
第22章 悪との対峙
エピローグ/謝辞/訳者あとがき/略語一覧/主要人名索引
[原題]The Dead Hand
[著者略歴]
デイヴィッド・E・ホフマン David E. Hoffman
米「ワシントン・ポスト」紙で、レーガン/ブッシュ両政権担当、モスクワ支局長をつとめたベテラン記者。冷戦の幕引きという20世紀の掉尾をかざる一大事件を、手に汗握る筆致で描いた本書で、2010年、ピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞。
[訳者略歴]
平賀秀明(ひらが・ひであき)
1956年生まれ。早稲田大学卒業。中国通信社、共同通信社勤務を経て翻訳家に。訳書にM・C・アロステギ『暗闇の戦士たち』、D・スタントン『巡洋艦インディアナポリス号の惨劇』(以上、朝日文庫)、B・ヘイグ『キング・メーカー』『反米同盟』『極秘制裁』、J・フィンダー『解雇通告』(以上、新潮文庫)、J・T・キャンベル『北朝鮮軍の賭け』(二見文庫)、E・トーマス『レイテ沖海戦1944』、L・ライト『倒壊する巨塔』、A・ビーヴァー『ノルマンディー上陸作戦1944』『第二次世界大戦1939-45』(以上、白水社)など多数。
*略歴は刊行時のものです