内容説明
全米図書賞最終候補、ストーリー賞受賞作品
歴史の裏面を題材に異才が放つ11の短篇集
古代ローマの属州の書記、フランス革命の死刑執行人、ヒマラヤ・崑崙を調査するナチの探検隊、世界初のソ連女性宇宙飛行士、チェルノブイリ原発事故に遭った技師など、歴史の裏面を題材に、「作家のための作家」と評される米国の異才が放つ、11の傑作短篇集。
「ゼロメートル・ダイビングチーム」
語り手ボリスは原子力エネルギー局の主任技師。上の弟はチェルノブイリ原発の技師で、事故の当日は夜勤に就いていた。原子炉近くで釣りをしていた下の弟も事故に遭遇。ボリスは事故調査を担当するが、上の弟は3週間後に死亡した。下の弟は25歳で障がい者年金をもらって暮らす身に。事故は操作ミスのせいにされ、病院から刑務所に移された職員もいる。事故から2年後の早朝、ボリスは自然が豊かに繁茂する光景を目にする。事故の日に夜勤した職員の多くが亡くなり、地域住民の多数が癌などの病で今も苦しむ。ここにまた人が住めるようになるか、誰にもわからない……。
本書は、年代も地域もトピックも多岐にわたる、異彩を放つ歴史的フィクション。「全米図書賞」最終候補に選ばれ、優れた短篇集に与えられる「ストーリー賞」を受賞している。
[目次]
ゼロメートル・ダイビングチーム
シルル紀のプロト・スコーピオン
ハドリアヌス帝の長城
死者を踏みつけろ、弱者を乗り越えろ
先祖から受け継いだもの(アーネンエルベ)
リツヤ湾のレジャーボート・クルージング
最初のオーストラリア中南部探検隊
俺のアイスキュロス
エロス7
初心者のための礼儀作法
サン・ファリーヌ
謝辞/訳者あとがき
[原題]Like You’d Understand, Anyway
[著者略歴]
ジム・シェパード Jim Shepard
1956年、米国コネチカット州生まれ。作家、ウィリアム大学創作家教授。これまで6作の長篇と4作に短篇集を発表。村上春樹の翻訳アンソロジー『恋しくて』(中央公論新社、2013年)にジム・シェパードの短篇「恋と水素」が収録され、吉本ばななに高く評価された。邦訳に『14歳のX計画』(白水社、2005年)がある。本作で全米図書賞最終候補に選出され、優れた短篇集に与えられるストーリー賞を受賞している。
[訳者略歴]
小竹由美子(こたけ・ゆみこ)
翻訳家。ジャクリーン・ウィルソン『みそっかすなんていわせない』(偕成社、1995年)など児童書・ヤングアダルト、ノーベル文学賞作家のアリス・マンローなど一般の海外小説の翻訳を数多く手がけている。白水社の邦訳書にA.N.ウィルソン『猫に名前はいらない』(2004年)、ジム・シェパード『14歳のX計画』(年)、ポール・トーディ『イエメンで鮭釣りを』(2009年)、『ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン』⁽2010年)、ポール・ハーディング『ティンカーズ』(2012年)がある。