内容説明
「圧倒的なまでに美しい」大空の捕食者たち
人間はなぜこんなにもハヤブサに心惹かれるのだろうか。時代の変化のなかでときには魂の象徴となり、ときには迫害された鳥の文化誌。
「自然界の貴族」の文化誌
古くから人間は、この機能美の極致ともいえる最速のハンターとその豪快な狩りに魅せられてきた。とはいえハヤブサと人間との関わりの歴史は、順風満帆とはいいがたいものだ。
ハヤブサは世界各地の神話で神となりトーテムとして崇拝され、鷹狩りに用いられる鳥のなかで高い地位を占めるかと思えば、ひとたび鷹狩りが西洋で人気を失うと、狩猟の獲物の天敵として時には目の敵にされた。『ゲド戦記』や『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』をはじめとする文学や映画のなかでは、荒々しい野生や自由・自立の魂の象徴として、またそれらの問題に直面した子どもに寄り添う守護動物として描かれた。20世紀には、大戦中に双方の陣営が実際にハヤブサの軍事利用を試し、アメリカでは国防総省やミサイル基地がハヤブサの研究や保護と接点をもつことになった。
そして各国で都市の鳥となった現在、ハヤブサと人間の関係は新たな段階を迎えつつある――
全米大ヒット作『オはオオタカのオ』の著者による、「自然界の貴族」の文化誌。カラーおよび白黒図版、約100点収録。
[目次]
二〇一六年版に寄せて
はじめに
第一章 自然誌
第二章 神話的ハヤブサ
第三章 調教されたハヤブサ
第四章 絶滅の危機に瀕したハヤブサ
第五章 軍隊のハヤブサ
第六章 都会のハヤブサ
年表
謝辞
訳者あとがき
関連団体およびウェブサイト/図版の権利について/参考文献/原注/索引
[原題]Falcon
[著者略歴]
イギリスの作家、詩人、画家。ケンブリッジ大学科学史・科学哲学科で学び、同大学特別研究員(リサーチ・フェロー)を経て、現在は特任研究員を務める。2014年刊の著書『オはオオタカのオ』は同年のサミュエル・ジョンソン賞(ノンフィクション部門)およびコスタ賞(伝記部門)に輝き、後者ではその年の受賞作の中から年間最優秀賞に選ばれた。その他数々の紙誌で年間ベストブックに選出、世界20か国で翻訳された。猛禽の調教をはじめ、BBC制作のドキュメンタリーや自然をテーマとするラジオ出演など多彩な活動に従事している。
[訳者略歴]
上智大学法学部国際関係法学科卒業、翻訳家。
訳書に、グライムズ『希望のヴァイオリン――ホロコーストを生き抜いた演奏家たち』(白水社)、ウィンドロウ『マンブル、ぼくの肩が好きなフクロウ』、グレアム『ぼくは原始人になった』(以上、河出書房新社)、シャピロ『マンモスのつくりかた――絶滅生物がクローンでよみがえる』(筑摩書房)など。