内容説明
現代移民論の焦点
オバマ政権からトランプ政権にかけて問題であり続ける移民論の参照軸となっている記念碑的論考。
最良の移民論入門
オバマ米大統領は、5年以上国内に滞在している不法移民に対して、犯罪歴がなく納税をしていることを条件に、合法的に労働できるよう大統領覚書を発した。これにより合法的地位を与えられた不法移民は500万人に上る。そして、新大統領トランプの「長城」建設構想はじめ反移民政策はもちろん、この覚書を標的にしたものである。
現在、1100万に上ると言われる不法移民は、アメリカにおける深刻な政治・社会問題となっており、この膨大な不法移民をどうするかは、文字通り国論を二分している。
本書は、移民論の「古典」として内外で参照される1冊である。その主張は極めて明快で、5年以上滞在している不法移民には「滞在権」が付与されるべきだと説く。
著者自身はもともと開放国境論を主張して、移民正義論を打ち立てた世界的権威。移民問題の深刻化を背景に本書の刊行に踏み切った。
日本でも移民は焦点として浮上しつつある。本書は、日本の読者向けに移民にアプローチするための読書案内、アメリカ移民法史年表とともに、井上彰、谷口功一、横濱竜也各氏による座談会「危機の時代の移民論」も付した。
[著者略歴]
ジョセフ・カレンズ
トロント大学政治学教授。カレッジ・オブ・ホーリークロス卒業、イェール大学で博士号取得。移民正義論における「開放国境論(open border theory)」の主唱者として著名。著書には、The Ethics of Immigration(Oxford University Press, 2013)、Culture, Citizenship, and Community: A Contextual Exploration of Justice as Evenhandedness (Oxford University Press, 2000)などがある。
[訳者略歴]
横濱竜也(よこはま・たつや)
1970年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。現在、静岡大学学術院人文社会科学領域教授。専門は法哲学。著書に『遵法責務論』(弘文堂)、『逞しきリベラリストとその批判者たち』(共著、ナカニシヤ出版)、『日本の夜の公共圏』(共著、白水社)他。