内容説明
科学の現場のダイナミズムに迫る
科学は私たちに何をどれくらいもたらしたのか? ほぼ半世紀にわたる第一人者の議論のエッセンスをまとめた一冊。
本書は、「科学とは何か」という極めて大きな問題を巡る、ほぼ半世紀にわたる著者の議論のエッセンスを、分かりやすくまとめたものである。
20世紀における科学の急激な発展と、それが引き起こした倫理的諸問題の考察からはじまり、科学には限界があるか、他の形態の知とどのような関係を保たなければならないのだろうかという問いに答えようと試みる。
本書の軸となる章では、科学の対象が異なるのに応じて用いられる方法も多様になるが、この多様性によって提起される問題の柔軟性にもかかわらず、科学の内に見出される統一性とは何を意味しているのか、そして、数理科学と経験科学という科学的知識の二つのタイプの対象および方法の相違、それらの間の関係が論じられる。
[目次]
序
第一章 「科学の時代」の諸問題
Ⅰ 科学の爆発的発展
Ⅱ 科学と日常生活
Ⅲ 科学という観念の大衆化
Ⅳ 新たな倫理的問題
第二章 科学的知識と技術知の相違
Ⅰ 古代における科学と技術知の関係
Ⅱ 経験的技術から科学的技術へ
Ⅲ 科学、技術、大量生産
第三章 方法の多様性と目標の統一性
Ⅰ 方法の複数性と方法論的「アナーキズム」
Ⅱ 科学の目標の三つの特徴
Ⅲ 科学の言語
第四章 形式科学と経験科学
Ⅰ 数学的対象
Ⅱ 数学における証明と真理
Ⅲ 経験科学の対象
Ⅳ 理論
Ⅴ 経験科学の命題の検証
第五章 自然科学と人間科学
Ⅰ 歴史学という極端な事例
Ⅱ 概念化と観察
Ⅲ 数学の活用
Ⅳ 言明の検証
第六章 科学的真理の進歩
Ⅰ 科学史の連続性と非連続性
Ⅱ 科学史の内的非連続性
Ⅲ 科学的進歩の観念
結び
訳者あとがき
原著者による読書案内
参考文献
科学用語集
[原題]La science et les sciences
[著者略歴]
ジル=ガストン・グランジェ
1920年生まれ。高等師範学校卒業。レンヌ大学教授、コレージュ・ド・フランス教授等を歴任後、コレージュ・ド・フランス名誉教授となる。現代フランスの科学認識論・科学哲学の第一人者。2016年逝去。
主な著書に、『形式的思考と人間の科学』『様式の哲学の試み』『アリストテレスの学問理論』『言語と認識論』『検証』『形式・操作・対象』『非合理的なもの』『空間についての思想』『科学と実在』(以上未邦訳)、『理性』(文庫クセジュ)、『哲学的認識のために』(法政大学出版局)など。
[訳者略歴]
松田克進(まつだ・かつのり)
1963年生。
龍谷大学文学部教授。
主な著訳書『デカルトをめぐる論戦』(共著、京都大学学術出版会、2013年)、ピエール=フランソワ・モロー『スピノザ入門』(共訳、白水社、2008年)。
[訳者略歴]
三宅岳史(みやけ・たけし)
1972年生。
香川大学教育学部准教授。
主な著訳書『ベルクソン哲学と科学の対話』(京都大学学術出版会、2012年)、ドミニック・ルクール『カンギレム』(共訳、白水社、2011年)。
[訳者略歴]
中村大介(なかむら・だいすけ)
1976年生。
豊橋技術科学大学総合教育院准教授。
主な著訳書『エピステモロジー』(共著、慶應義塾大学出版会、2013年)、『主体の論理・概念の倫理』(共著、以文社、2017年)。
*略歴は刊行時のものです