内容説明
英国のジャーナリストが見た、少数民族のいま
北京から遠く離れた国境地域のみならず「境界の向こう側」にまで足を延ばし、現在と過去を自在に行き来して、急速に進む漢化政策に抗い、翻弄される少数民族の実相を描く。ジャーナリズムに歴史的視点を巧みに取り込んだ傑作ノンフィクション!
米英主要紙誌が絶賛!
「中国共産党の公式見解に対する強烈なカウンター」――『ニューヨーク・タイムズ』
「土地や人びとの繊細な描写が秀逸」――『ウォールストリート・ジャーナル』
「独創的で洞察力に富む紀行書」――『ガーディアン』
「北京や上海に背を向け、著者のアイマーは中国の奥地に向かった。2万キロ以上に及ぶ国境線近くには、無法地帯もあれば、共産党の縛りが遠く及ばない町もある。アイマーは少数民族が住むこうした場所に足を踏み入れ、大多数の漢民族に対する抗議の声を丹念に拾い上げた」――『フィナンシャル・タイムズ』
「あまたある中国旅行記のなかで、まさに新境地を開いた傑作」――『デイリー・テレグラフ』
「境界」に漂うただならぬ空気
ひと口に国境と言っても、さまざまなかたちがある。検問所が設けられ、出入国の際に賄賂が必要なもの。フェンスはあるが穴だらけで自由に出入りできるもの。そもそもどこが境なのか定かでないもの。
本書は、1980年代から中国取材を続けてきたジャーナリストが、新疆、チベット、雲南、東北部の国境地帯を歩き、そこに暮らす少数民族にいま何が起きているのかを詳細に描いたルポである。各地に共通するのは、漢化政策が加速し大量の漢民族移住者が押し寄せていること、そして、国境の「向こう側」と必ずしも隔絶しているわけではないということだ。
しかし、同じ国境地帯とはいえ、地域によって事情は大きく異なる。新疆やチベットでは、漢民族との軋轢が、ときに暴動や焼身自殺というかたちで表出する。一方、雲南に足を延ばすと、麻薬、売春、密輸、人身売買など、漢民族を巻き込んだ(あるいは無視した)国境なき不法行為が横行し、地元当局を悩ませる。そして東北部には北朝鮮という不確定要素が横たわり、人口減少が進む極東ロシアとの間では経済格差が広がるばかり……。
ジャーナリズムの手法に歴史的視点を巧みに取り入れながら、現地の人びとの生の声やエピソードをふんだんに盛り込んで、急速に進む漢化政策に抗い、翻弄されるマイノリティーの実相を描く。米英主要紙誌が絶賛した現代中国ノンフィクションの白眉!
[目次]
はじめに
第1部 新疆──ニューフロンティア
1 「ウイグル人はパンダみたいなもの」
2 新たなシルクロード
3 亡命者たち
4 グレートゲームふたたび
5 カシュガル再訪
6 三つの国境
7 ウイグルスタン
第2部 チベット──ワイルドウェスト
8 チベットの国境地域
9 ラサ
10 ナンマは踊る
11 ウー・ツァン
12 高原の漂流者
13 雪の宝物
14 下山
第3部 雲南──楽園のトラブル
15 シャイニー・ハッピー・マイノリティーズ
16 ダイ国
17 メコンを下って
18 ダイ族のディアスポラ
19 ワ族とともに
20 売りに出される女たち
第4部 東北部──境界を押し広げる
21 平壌急行
22 第三のコリア
23 御言葉を広める
24 極寒の国境地方
25 アムール川に沿って
26 拡張する帝国
謝辞
参考文献
人名・地名索引
[原題]THE EMPEROR FAR AWAY: Travels at the Edge of China
[著者略歴]
デイヴィッド・アイマー(David Eimer)
2007~2012年『サンデー・テレグラフ』北京特派員。この間、コラムニストとして『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』にも寄稿。1988年に初めて中国を訪れて以来、中国行脚を続け、ほぼ全省を踏破した。2005~2012年、北京に滞在。その後、タイ・バンコクに居を移し、2012~2014年『デイリー・テレグラフ』東南アジア特派員。
[訳者略歴]
近藤隆文(こんどう・たかふみ)
翻訳家。1963年静岡県生まれ。一橋大学社会学部卒業。
訳書に、クリストファー・マクドゥーガル『BORN TO RUN 走るために生まれた』、デイヴィッド・グラン『ロスト・シティZ』(以上、NHK出版)、J・B・モリソン『フランク・デリク81歳 素晴らしき普通の人生』(三賢社)など多数。
*略歴は刊行時のものです