内容説明
第二次ポエニ戦争から六世紀のベリサリウスまで
戦争はいかにローマ史に影響を与え、ローマ国家の変化はいかに戦争を変えたか。15人の名将とその象徴的な戦いから描いたローマ史概説。
困難の中で勝利を信じた男たち
ローマという国の歴史において、戦争は重要な役割を果たしている。長らく政治家が軍司令官でもあったこの帝国をつくり上げ、長期間にわたって維持したのは、戦争だったからである。本書はローマの最も成功した将軍たちのなかから、分析が可能なだけの史料が現存する15人とその象徴的な戦いを選んで描きつつ、古代ローマの歴史を、司令官と国家・司令官と軍(将校や兵士)の関係の変化の面から時代背景ごと読む。軍事から見たローマ史である。
取り上げられている顔ぶれは、第2次ポエニ戦争の「ローマの盾と剣」ファビウスとマルケッルスから、スキピオ家の人々、ゲリラ戦の達人セルトリウス、カエサルやポンペイウスといった巨星、ネロ帝時代随一の名将コルブロ、4世紀の軍と司令官の関係を象徴するユリアヌスなどをへて、6世紀のベリサリウスにいたる。その章までたどりついたとき、司令官と軍との関係や軍そのものが、過去の、特にカエサルが戦記に叙述したものから、いかに変わったかを比較すると感慨深い。ローマ国家の変化が戦争を変え、戦争はローマ国家に影響を及ぼしていったことを知る1冊。
[目次]
イェール大学出版局版(二〇一六年)へのまえがき
はじめに
序章 始まり――首長=英雄から政治家=将軍へ
第1章 「ローマの盾と剣」――ファビウスとマルケッルス
第2章 ローマのハンニバル――スキピオ・アフリカヌス
第3章 マケドニア征服者――アエミリウス・パウルス
第4章 「小戦争」――スキピオ・アエミリアヌスとヌマンティア戦争
第5章 「戦争に専念した人」――ガイウス・マリウス
第6章 亡命将軍――セルトリウスと内乱
第7章 ローマのアレクサンドロス――大ポンペイウス
第8章 ガリアにおけるカエサル
第9章 カエサル対ポンペイウス
第10章 「皇太子」――ライン川を越えるゲルマニクス
第11章 皇帝の代理人――コルブロとアルメニア戦争
第12章 若きカエサル――ティトゥスのエルサレム攻囲戦、紀元七〇年
第13章 最後の大征服者――トラヤヌスのダキア戦争
第14章 戦う副帝――ガリアにおけるユリアヌスの作戦行動、三五六――六〇年
第15章 ローマ帝国最後の名将――ベリサリウスとペルシア戦争
第16章 後世へ――ローマの名将たちの遺産
訳者あとがき
年表
用語解説
原注
索引
[原題]IN THE NAME OF ROME: The Men Who Won the Roman Empire
[著者略歴]
エイドリアン・ゴールズワーシー
1969年生まれのイギリスの歴史家。オクスフォード大学セント・ジョンズ・カレッジで学び、キングズ・カレッジ・ロンドンなどで客員教授を務めた。現在は著述業のかたわら、ノートルダム大学のロンドン・キャンパスで教鞭をとっている。古代ローマとローマ軍事史の専門家として知られ、著書は他に『カエサル』『アントニウスとクレオパトラ』(白水社)、『図説 古代ローマの戦い』『古代ローマ軍事大百科』(東洋書林)などがある。
[訳者略歴]
阪本浩(さかもと・ひろし)
青山学院大学文学部史学科教授
東北大学大学院文学研究科博士課程退学
専門は古代ローマ史
訳書は他にゴールズワーシー『アントニウスとクレオパトラ』(白水社)、ガーンジィ『古代ギリシア・ローマの飢饉と食糧供給』(共訳、白水社)、ウィルケン『ローマ人が見たキリスト教』(共訳、ヨルダン社)がある。
*略歴は刊行時のものです