内容説明
岐路に立つリベラルな文化交流の最前線
コロナ禍や一国主義の台頭で揺らぐ国際協調をいかに守るか? 心と心の触れ合いに懸けたJF職員たちの渾身のルポルタージュ!
「共感」すること。忘れてませんか?
世界には今、絶望と怒りが充満している―。
国際情勢に楔を打ち込んだブレグジットや米中対立、各国を揺さぶるポピュリズムや権威主義体制への誘惑など挙げればきりがない。
この流れに拍車をかけたのが、新型コロナウイルス感染拡大である。人びとの移動や交流は全く途絶えてしまった。第二次世界大戦後に構築された国際協調を旨とする戦後秩序は風前の灯である。
この秩序の根幹にあるのは、人びとが「共感」することである。そして、「共感」の恢復を生業としているのが、国際交流基金だ。
本書は、心と心の交流に懸けた国際交流基金職員たちのルポルタージュである。
国際文化交流とは何か、世界各地で文化と交流がいかに結び付けられているか、といった大きな問題を、本書では一人ひとりの等身大の視点から描く。
この地平から見えてくるのは、何事も「人に始まり、人に終わる」ということだ。当たり前の平凡な結論に見えるかもしれないが、いつしかわたしたちが忘れてしまったものがここにはある。辛抱強く他者とつながり続けること。世界各地で「共感」を掘り起こす彼らの姿がいまほど切実に映る時代はないであろう。
[目次]
序 章 国際交流の現場から >立ち読み
第一章 〈分断〉を飛び越える
心と心をつなぐ試み——アジアセンターのDNA(鈴木勉)
ジャポニスム二〇一八——未曾有の日本文化事業(嶋根智章)
銀幕が映す文化交流(許斐雅文)
「日本語パートナーズ」ってなあに?——事業はこうして生まれる(高橋裕一)
日本語の裾野を拡げる——インドネシアにおける経験(榛澤周一)
〈心連心〉——日本と中国、心をつなぐ(横田有紀)
コラム 国際交流基金の歩み(小島寛之)
第二章 人に始まり、人に終わる
プラットフォームのつくり方——相手に寄り添う(松岡裕佑)
日韓文化交流の最前線に身を置いて——周年事業を例に(武田康孝)
変化の中の日米交流——「助成」の意味を考える(山本訓子)
〈防災国際交流〉で世界をつなぐ(瀧田あゆみ・後藤愛)
コラム 世界の国際文化交流のトレンド(小島寛之)
第三章 歩きながら考える
日本文化は本当に中国で受け入れられているのか(久保田淳一)
異なるルーツを持つ隣国同士の絡み合い——日本とロシア(高口真法)
インドのIT人材——JFのアプローチ(田中洋二郎)
シルクロードはまた文化の道——ユーラシアの未来の大国で(栗原毅)
中東と日本——親日の基盤上に築く共感と連帯(佐藤幸治)
終 章 国際文化交流とは? その果たしうる役割とは? (小川忠)
執筆者略歴
編:
国際交流基金(JF)
ニクソンショックに伴う国際経済危機のさなかに福田赳夫外相の提唱で1972年に特殊法人として創設。2003年に独立行政法人へ移行。公共・外交政策として国際文化交流を担う日本で唯一の専門機関。