内容説明
鳩の帰巣訓練の中で考える、家とは何なのか
鳩と一緒にゼーバルトや『オデュッセイア』を読む
家(ホーム)とは、故郷とはなんなのか、鳩たちが教えてくれるかもしれない――
ロンドンの若き大学教員が、家庭のありかたや育児の難しさに苦しんだとき、心のよりどころとしたのは、千キロメートルのかなたから巣に帰ってくるレース鳩だった。子育てにも似た鳩の訓練をしながら、ブレグジットの時代に、「家」や「故郷」をめぐる文学を読んだ記録。
「本書では、レース鳩をテーマにしたネイチャーライティング的側面と、著者の家庭作りのようすが絡みあっているのですが、ただ個人的な体験が綴られるだけでなく、『オデュッセイア』『アウステルリッツ』をはじめとする文学作品や、ハイデッガー、ロラン・バルト、シモーヌ・ヴェイユといった哲学者の作品、フロイトやダーウィン、さらには異端の生物学者ルパート・シェルドレイクなどの引用も交え、“ホーム(家、家庭)”“故郷”“ホームランド(祖国・母国)”に関してさまざまな考察がなされています。」(訳者あとがきより)
ブレグジットのイギリスで考える「家とは何か」
ロンドンで自転車便のドライバーをしていた若き文学者である著者は、大学にポストを得、パートナーが妊娠したことを機に、郊外に家を買った。ところがわが子の誕生が近づくにつれて、自由を奪われ家に縛りつけられているように感じて冒険を夢見はじめ、誕生後は母乳もミルクもなかなか飲まない赤子に、育児ノイローゼのようになってしまう。さらに第二子の流産をきっかけにふたりの間に溝が生まれたことで、自分が思い描いていた「家庭」からしめ出されているように感じはじめる。
そんな時に彼が思いだしたのは、子どものころ飼っていた鳩だった。雌雄がともに子育てをし、千キロのかなたから巣に帰ってくる伝書鳩とまた暮らしたら、家のなんたるかを彼らが教えてくれるかもしれない―。
本書は、ときに子育てに似たレース鳩の訓練という側面と、著者の家庭作りという側面を絡めつつ、ホメロス、ゼーバルトをはじめとする文学作品や、ハイデッガー、ロラン・バルト、シモーヌ・ヴェイユといった哲学者の著作、フロイトやダーウィンを読む。ブッカー賞元選考委員が、ブレグジットに揺れるロンドンで家、家庭、故郷、祖国に関して考察した記録である。
[目次]
午前七時一五分、サーソー、家から八一一キロ
第一章 わが家に入居する
午前七時二〇分、サーソー、家から八一一キロ
第二章 鳥
午前八時二〇分、マレー湾、家から七四〇キロ
第三章 家づくり
午前一〇時四五分、ダンディー、家から五八二キロ
第四章 探索
午前一一時一五分、エディンバラ、家から五三七キロ
第五章 家への旅路
午後一二時三分、ベリック= アポン= ツイード、家から四八六キロ
第六章 祖国
午後一時三七分、サンダーランド、家から三七八キロ
第七章 空へ放す
午後二時二八分、ウィットビー、家から三二八キロ
第八章 家との結びつき
午後四時七分、グリムズビー、家から二三二キロ
第九章 家なし
午後五時四〇分、ウォッシュ湾、家から一六〇キロ
第一〇章 待つ
午後六時五五分、ケンブリッジ、家から七〇キロ
第一一章 ホームシック
午後七時四九分、ラムフォード、家から一三キロ
第一二章 家に帰る
家
謝辞
訳者あとがき
参考文献
索引
著者紹介
キングス・カレッジ・ロンドン講師(現代英米文学)。オックスフォード大学セント・ジョンズ・カレッジでDPhil取得。ロンドン・レビュー・オブ・ブックス、ガーディアン、フィナンシャルタイムズ他に寄稿している。2016年にはマン・ブッカー賞の審査員を務めた。著書は他にCyclogeography(2015)がある。
訳者紹介
上智大学法学部国際関係法学科卒業、翻訳家。 訳書に、グライムズ『希望のヴァイオリン――ホロコーストを生き抜いた演奏家たち』、マクドナルド『ハヤブサ』(以上、白水社)、ウィンドロウ『マンブル、ぼくの肩が好きなフクロウ』、フィンケル『ある世捨て人の物語』(以上、河出書房新社)ミッチェル『今日のわたしは、だれ?』(筑摩書房)、『モーツァルトのムクドリ』(青土社)など。























