内容説明
なぜこれほどまでに彼の言葉は刺さるのか!
天才の思想の真髄に迫る刺激的な41章
「考える葦」「賭け」「クレオパトラの鼻」……忘れがたい名句やイメージを数多く残した天才の、その思想の真髄に迫る刺激的な41章。
「心には心の言い分があるが、理性はそれらをまったく知らない」
「この無限の諸空間の永遠の沈黙が私を恐怖させる」
「人間は天使でも獣でもない。そして不幸にも、天使のふるまいをしようとすれば、獣のふるまいをすることになるのだ」
優れた数学者、物理学者、また哲学者にして神学者でもあったブレーズ・パスカル(一六二三―一六六二)。彼は人間と信仰について思索を重ね、未完の断章を大量に残してわずか三十九歳でこの世を去った。のちに『パンセ』というタイトルでまとめられた主著は、「考える葦」「賭け」「クレオパトラの鼻」など、忘れがたい名句やイメージに溢れ、世界中で読み継がれて今日に至る。
本書は、そんなフランス屈指の名文家パスカルの選りすぐりの断章(パンセ)を、フランス文学界最高の案内人が豊富かつ巧みに紹介しながら、その思想の真髄に迫る刺激的なエッセイ。好評を博した毎日5分の人気ラジオ番組が元となっている。本格派でありながら広く開かれたテクストが、最良の研究者・翻訳者を得て、いま日本の読者に届けられる。
ブレーズ・パスカル Blaise Pascal (1623-1662)
フランスの数学者、物理学者、哲学者にして神学者。オーヴェルニュ地方クレルモン生まれ。3歳で母が他界し、1631年に租税官で数学者の父、姉妹とパリに移住、英才教育を受ける。16歳で「円錐曲線試論」を執筆、19歳で計算機を発明、23歳で真空の存在実験を考案する他、数学や物理学で創造的な仕事を残す。一家は厳格なカトリックであるジャンセニスムの信仰に接近。自身も決定的な神秘体験を得て回心する。1656~57年、ジャンセニスムの恩寵観を敵視・迫害するイエズス会を滑稽化、嘲笑する諷刺文書18通を次々発表(『プロヴァンシアル』)、反響を呼ぶ。さらに「キリスト教の擁護」執筆に着手するも39歳で病死。断章形式で残された草稿は、死後まとめられ、1670年『パンセ』として刊行。
[著者略歴]
アントワーヌ・コンパニョン Antoine Compagnon(1950 - )
ベルギー生まれのフランス文学者。ソルボンヌ大学教授を経て、コレージュ・ド・フランスおよびコロンビア大学教授。プルーストやモンテーニュの専門家として、また文学理論と仏文学史に関する刺激的な著作によって国際的に広く知られる。著書に『近代芸術の五つのパラドックス』『文学をめぐる理論と常識』など。モンテーニュの作品と思想を紹介した毎日5分のラジオの番組と、その書籍化が大きな評判となり、シリーズ化。このシリーズで他にプルースト(複数の著者との共著)、ボードレール、そして本書のパスカルを手がける。
[訳者略歴]
広田昌義(ひろた・まさよし)
京都大学名誉教授
訳書:『メナール版 パスカル全集』第一・二巻(白水社、共編)、E・モロ=シール『パスカルの形而上学』(人文書院)、クレマン・モワザン『文学史再考』(白水文庫クセジュ)、『モリエール全集』(臨川書店、共編)など。
北原ルミ(きたはら・るみ)
金城学院大学准教授
訳書:アリエット・アルメル『ビルキス、あるいはシバの女王への旅』(白水社)、コレット・ボーヌ『幻想のジャンヌ・ダルク 中世の想像力と社会』(昭和堂、共訳)など。