内容説明
災厄の全体像に迫る傑作ノンフィクション
『NYタイムズ』最優秀書籍(2019年)に選出
「チェルノブイリ後」、そして「フクシマ後」を生きる試練とは? 体制のあり方に事故の深層を探り、未曽有の災厄の全体像に迫る![カラー口絵16頁]
「チェルノブイリ」と「フクシマ」に通底するものとは?
チェルノブイリは「平和の原子力」の象徴として、ソ連で最も安全で進んだ原発と言われていた。しかし、一九八六年四月の原子炉爆発事故によって、歴史に汚名を残す末路をたどった。事故からすでに三六年が経過しようとし、その間にアレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り 未来の物語』をはじめ、数多の著作や研究が世に問われてきたが、ソ連やロシア連邦の根深い秘密主義のために、今でも全容が解明されたわけではない。
最新刊の本書は、構造的な欠陥をはらんだ原発が誕生した経緯から、北半球を覆った未曾有の放射能汚染、多くの人々の心身に残した傷にいたるまで、気鋭のジャーナリストが綿密な取材と調査を通して、想像を絶する災厄の全体像に迫った、渾身のノンフィクション作品だ。
「秘密主義とうぬぼれ、傲慢と怠惰、設計と建造のずさんな基準」といった「原子力国家の心臓部を蝕む腐敗」、すなわち体制のあり方そのものに悲劇の深層を探り、人生を狂わされた生身の人々の群像を克明に描いた、調査報道の金字塔。
本書は、『ニューヨーク・タイムズ』『タイム』『カーカス・レビュー』の年間最優秀書籍(二〇一九年)に選出された。
[著者略歴]
アダム・ヒギンボタム ADAM HIGGINBOTHAM
ロンドンでジャーナリストを始め、現在はニューヨーク在住。『ニューヨーク・タイムズ』『ニューヨーカー』などに寄稿している。本書は『ニューヨーク・タイムズ』『タイム』『カーカス・レビュー』の「年間最優秀書籍」(2019年)に選出された。
[訳者略歴]
松島芳彦(まつしま・よしひこ)
ジャーナリスト。主要訳書にロバーツ『スターリンの将軍ジューコフ』、メリデール『イワンの戦争』、『クレムリン 上下』、トーブマン『ゴルバチョフ 上下』、マクフォール『冷たい戦争から熱い平和へ 上下』ほかがある。