(One Way Street Tokyoより)
『房思琪の初恋の楽園』の翻訳者である泉京鹿さんご出演のトークイベントが開催されます。
■日時:2024年3月2日(土)14:30~16:00
■会場:One Way Street Tokyo(単向街書店銀座店)
■一般入場券:1500円
こちらよりお申し込みください。
https://one-way-street.com/ja/event/chinese-literature/
大学の第二外国語として中国語に出会った90年代の東京で、中国社会や中国文化を知りたくて現代小説の日本語訳を探しても、多くの図書館ではほぼ古典しか見つからず、専門書店にいかなければ手に入りませんでした。ノンフィクションもいいけれど、もともと小説好きだったわたしは、フィクションの世界でこそ味わえる文化や生活や感情の深いところ、中国の人々の喜怒哀楽を読みたかったのです。同じころ、北京、上海、台北、香港等中国語圏ではどこの書店でも目立つところに日本文学作品の中国語訳が驚くほどたくさん並んでいました。
それから約30年たった現在、『三体』の大ベストセラーに始まって、SF、華文ミステリーなど、中国の小説の日本語訳は少しずつ身近なものになりつつあります。とはいえ、人口比だけの問題ではなく、中国語から日本語への文芸翻訳、出版翻訳人材は常に不足しているのが現状です。また、過去に翻訳された名作・名訳の多くが、ほどなくして絶版となり、入手困難となっている例も少なくありません。
私自身がこれまでに翻訳した作品の多くは、中国簡体字版、繁体字版の原書が今でも入手可能で、書店でも目立つ位置に並んでいるような不朽の名作・ロングセラーばかりですが、その日本語訳はそうではありません。たとえば、余華『兄弟』、林奕含『房思琪の初恋の楽園』は中国語圏の人ならだれでも知っている大ベストセラー、ロングセラーですが、日本語訳は長らく入手できなくなっていました。この二作品が最近、それぞれ新たな形で復刊となったことは、とても喜ばしい出来事です。これまでのわたしの翻訳の経験をお話しさせていただくとともに、日本における中国文学翻訳の現状や課題について、みなさんと一緒に考えることができたら嬉しく思います。