内容説明
世界経済のトリレンマと、その後……
ポピュリズム的ナショナリズムと高度産業社会に充満する不安を理解するための必読書。フランシス・フクヤマ、ラグラム・ラジャン推薦
>【特別寄稿】ロドリック『貿易戦争の政治経済学』解説 大川良文
>【特別寄稿】柴山桂太「政治的想像力を広げるために――『貿易戦争の政治経済学』解説に代えて」
自由主義と重商主義の攻防
グローバル経済の行く末は、ますます不透明になってきた。ブレグジットやトランプ大統領の誕生で、米国と欧州は傷ついた巨人としてもがき苦しんでいる。低成長に喘ぐとともに、格差の拡大で社会の足場が大きく腐食されているのだ。
本書の著者、ダニ・ロドリックは『グローバリゼーション・パラドクス』でこうした展開を正確に予測していた。本書は、『グローバリゼーション・パラドクス』以後の世界を展望した最新刊である。
本書によると、米英を中心とした自由主義陣営と中国を中心とした重商主義陣営が相互に共存できる時代がここ数年で終焉したという。先進国においても雇用や輸出が重視され、米国が重商主義に改宗しようとしているのは象徴的だ。
成長の核になる途上国の未来も暗い。グローバリゼーションとテクノロジーの進展は、貧困国に十分な産業化の時間を与えず、「早すぎる脱工業化」が世界を蝕んでいるのだ。
ポピュリズムや「怒りの政治」はこうした事態を栄養源として成長してきた。自由主義と重商主義の攻防にどう向き合うのか? 中道左派はいかに国民の信頼を取り戻すべきなのか? 資本主義を再構築するための新たな提言!
[目次]
序
第一章 より良いバランスを取り戻す >立ち読み(1)(2)
第二章 国家の仕組み
第三章 欧州の苦闘
第四章 仕事、産業化、民主主義
第五章 経済学者と経済モデル
第六章 経済学上のコンセンサスの危機
第七章 経済学者、政治、アイデア
第八章 政策イノベーションとしての経済学
第九章 何がうまくいかないのか
第十章 グローバル経済の新たなルール
第十一章 将来に向けた成長政策
第十二章 政治こそが重要なのだ、愚か者!
謝辞
訳者あとがき >立ち読み
出典
註
索引
[著者略歴]
ダニ・ロドリック(Dani Rodrik)
1957年、トルコ・イスタンブールに生まれる。米ハーバード大学を卒業後、プリンストン大学でMPA、PhD.をそれぞれ取得。プリンストン高等研究所(IAS School of Social Science)教授などを経て、現在、ハーバード大学ケネディ・スクール教授。専門は国際経済学、経済成長論、政治経済学。『グローバリゼーション・パラドクス』(白水社)は世界中で話題に。同書のほか、1997年に刊行されたHas Globalization Gone Too Far? (IIE) は、米ビジネス・ウィーク誌で「1990年代における最も重要な経済書」と称賛される。One Economics, Many Recipes: Globalization, Institutions, and Economic Growth (Princeton 2007), The New Global Economy and Developing Countries: Making Openness Work (Overseas Development Council, Washington DC, 1999) 、『エコノミクス・ルール』(白水社)他。
[訳者略歴]
岩本正明(いわもと・まさあき)
1979年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、時事通信社に入社。経済部を経て、ニューヨーク州立大院で経済学修士号を取得。通信社ブルームバーグに転じて独立。訳書にプレンダー『金融危機はまた起こる』、ボージャス『移民の政治経済学』(以上、白水社)、アーノルド『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』(ダイヤモンド社)。
*略歴は刊行時のものです